消えゆく鉄道'04 その3
●鹿島鉄道・日立電鉄
次の3月は、3路線もの私鉄が一気に姿を消す。
どこも我々が過去に訪れたことのある路線だが、今年で最後ということであれば、もう一度その姿を目にしておきたいと思う。
その3連戦の1戦目として、日立電鉄を選んだ。
3月の廃止までに行動できる大きな休みと言えば、夏休み、冬休み、そしてこのゴールデンウィークである。能登は冬、岐阜は夏が似合いそうだ。すると必然的 に北関東は今回が そのチャンスとなる。
別に仕方なく、と言うわけでもない。北関東は水田が多く、ちょうど田植えの時期に当たるこのタイミングは、ベストシーズンともいえよう。
ついでに鹿島鉄道も探訪する、今回の旅となった。
5月1日の夜、我々は一路茨城を目指して北進していた。初日は日立電鉄を目的地に考えていたのだが、いろいろあって(いやぶっちゃけスロット打ってただけ だが)出発が押してしまったこともあり、体力的に限界がやってきた。
結局この日は石岡で6号線を脱落することとなる。
そして翌朝。夜を明かしたのは、何年か前にも訪れた、桃浦駅だった。
今日は一日、鹿島鉄道の取材をすることにした。
朝からやかましいエンジン音がして、キハ600が通り過ぎていくのが見えたが、眠さに勝てず、9時ごろまで寝坊していた。
どのみちフィルムを買っていない。運良く少し行った所にカメラ店があり、開店と同時にフィルムを購入。再び桃浦に戻ってきた。
桃浦駅 花咲き乱れる
鹿島鉄道で景色が良いのは、常陸小川から東側だ。そこから終点までの間を行ったり来たりしながら撮影していく。
まずは、隣の八木蒔駅だ。
切り通しの向こうに、霞ヶ浦が見える。なんとも気持ちのいい風景だ。
カメラを構えて待っていると・・・・
キハ432
なんと、430形がやってきたではないか!
ここを訪れるのは3度目だが、こいつに会うのは初めてだ。朝からテンションが上がる。
430は八木蒔に停車。ホームには手書きの時刻表が立っていて、いい味を出している。
山間の無人駅 なんという味わい深さ
次は浜駅だ。緑のじゅうたんの中に駅があるような、美しいところだ。
浜駅 初夏
さらに東に進むと、榎本駅に到着した。ここで列車を待ってみることにしよう。
木造の駅舎
ダイヤを見ると、ここで交換があるようだ。ホームでカメラを構えて待っていると、下り方から踏み切りの音がする。
さっきの430が戻ってきたようだ。
今は端午の節句
すぐに反対側でも踏切が鳴った。目を向けると・・・
600形ではないですか!
キハ601
はからずも、旧車同士の離合と言う、絶妙のタイミングに立ち会うことができた。
まるで昭和40年代
ここ榎本駅は、かつて自衛隊の燃料を貨車で輸送していたころは、荷下ろし駅だった。ここからパイプラインで百里基地までつながっていたのだが、貨物による 燃料輸送はすでに廃止となっている。今は積卸設備だけが淋しく残っている。
自衛隊の廃墟?
さて、一気に終点の鉾田駅にやってきた。天気もよく、本当に気持ちいい。
ホームで折り返しを待つ600形も、気分よさそうだ。
鉾田駅
日光浴 お出かけも楽しい天気
その600形の発車前に、我々も折り返し、道中でそれがやってくるのを待つ。
ススキ野原を行く
相手は遅いディーゼルカーなので、簡単に先回りすることができる。我々は玉造町駅まで先行し、600形を待った。
バスと言い駅のつくりとい い最高
程なく600形がやってきた。水の引かれた水田がまぶしい。
鏡のような 水田 風薫る季節
さて、途中で何度か列車を撮影しながら、我々は常陸小川駅まで戻ってきた。
ここには、かつての燃料列車の先頭にも立った、DD90型機関車が留置されている。
放置ではなく、この鉄道の記念物として、しっかり管理されている。
常陸小川駅 DD901
ここの車止めは、とても面白い。なんと、連結器が付いているのだ。
つながったところを見てみたい
すでに時刻は15時を過ぎている。日差しも薄くなってきた。
浜駅の近くで、国道と立体交差するのだが、その土手から線路を眺める。
丘の向こうから、列車がやってきた。なんともいえない、牧歌的な風景だ。
丘の向こうは玉造町駅
ずらりと並ぶベンチレータ
日差しもすっかり夕日になった。雲も再び切れ、あたりを黄金色に染めている。
こんな時は、やはり桃浦の開けた風景で写真を撮りたくなる。
霞ヶ浦を背に
クリーム色の汽車が、夕日を浴びてさらにやわらかい色になっている。なんと美しいことか。
夕日の色 ほんとに21世紀?
800形は、夕闇と共に、西へ去っていった。
逆行の中
最後に、もっとも始点に近い、石岡南台駅に寄ってみた。もうすっかり日も暮れ、薄暗い中をKR−500形が走り去っていった。
近代的な駅 だ
これをもって、鹿島鉄道の撮影は終了。一路日立市を目指す。
もうすっかり夜も更けた。今夜は風呂に入りたいので、温泉か銭湯を探して走っていたが、まったく見当たらない。
風呂に入れないと明日がきついなー、などと困惑しながら、ふと道路の脇を見ると・・・
なんだこりゃ!??
うわっ!
塗装からして、これから向かう日立電鉄の電車のようだ。
あわてて車を停め、その電車に近寄ってみた。
ここは材木工場の駐車場だ。中をのぞくと、倉庫に使われているらしい。
いきなり夜中にこんなものに出会うと、その腐れ状態も相俟って、非常にブキミである。
こ、こわい・・・
この日はJRの常陸太田駅近くにあるショッピングセンターに車を停めた。近所の養老乃滝で飲んでいるうちに、駐車場はチェーンが掛けられてしまったが、ど のみち明朝まで移動できないので、それはかまわない。
夜が明けた。
昨日の晴天が打って変わって・・・どんよりとした曇り空だ。日差しは全く無く、薄暗い。
朝からこんな調子では写真を撮る気も起きないので、とりあえず夕べ営業時間に間に合わなかった温泉に浸かって、朝を過ごした。
しばらく経ったところで、天気が回復するはずも無い。とにかくこんな天気でもやることはやらねばならない。
まずは常北太田駅に立ち寄り、様子を伺こととした。
常北太田駅 結構なにぎわい
そこから東へ順番に各駅に立ち寄りながら、やってくる電車を撮影した。
小沢駅で迎える
期待した水田は、確かに広がっている。水も入って、鏡のようだ。
しかし・・・しかし如何せんこの天気では・・・。ここに掲載している写真はかなり明度を上げているが、実際はもっと真っ暗で、手ブレとの戦いであった。
曇り空と赤い電車 本当は真っ暗な写真
大橋の陸橋にやってきた。日立電鉄の名所のひとつでもある。
川もないし、地形に無理も無いのに、なぜか鉄橋が架かっている、不思議な場所だ。
なぞの陸橋 道路を越えるため・・・?
今回はすべての駅に立ち寄ってスナップを撮ることに決めた。駅名標には、各駅ユニークのイラストが描かれている。
小沢駅 大橋駅は国道のバス
そしてやってきたのは南高野駅だ。道路に面した、ホームだけの駅である。
しかし、民家が多いからか学校が近いからか、結構な乗客の乗り降りがあった。
停車中 南高野駅
でんしゃ、たのしいな
東進を続けよう。久慈浜駅は、電車工場がある、比較的大きい規模の駅だ。
しかし今日は休日。工場の人はおろか、駅員もいない。がらんとした構内に、放置された電車が淋しそうだった。
久慈浜駅 人気の無い構内
色あせて悲しそう
その隣の大甕駅で、日立電鉄はJR常磐線と接続する。駅舎はJRの立派なものだ。
陸橋から構内を眺めると、旧塗色に戻された電車が止まっている。ぜんぜん見かけないと思ったらこんなところにいた。
どうやら今日は出番が無いらしい。走ってる姿にちょっと期待しただけに、残念だ。
大甕駅 あの旧色を撮りたいのだが
この先で電車はJR線を大きく越えてさらに東へ向かう。
JRと並走
水木駅 こういう券売機も懐かしい
大甕から先は、なんとなく沿線の雰囲気も違う。住宅地の中を行くからか。
水木駅も、そんな住宅街の中の駅だ。駅舎は、もう営業していないスーパーマーケットの店舗との合造だ。
レトロな出札口 昭和テイスト
電車から自転車に乗った人が降りてきてびっくりした。日立電鉄は、車内に自転車 を持ち込んでもOKらしい。
チャリがホームに
河原子駅を過ぎると、海がすぐ近くにやってくる。
高台の駅
海が見えると終点も間近だ。程なく鮎川駅に到着した。すぐ隣をJR常磐線が走っているが、連絡しているわけではない。
駅もほとんど人がおらず、閑散としている。
鮎川駅 常磐線が駆け抜けていく
車内はがらんとしてる ちいさな花
さて、まだ15時ごろだが、雲は結局厚さを変えず、日没まで時間があると言うのにもうどんよりと暗い。撮影も限界に近い。
とりあえずひとつ戻って桜川駅にやってきた。ここは日立製作所の工場に直結した駅で、大量の通勤客を見越して大変広い構内とホームを持っている。
桜川駅
ゆったり した構内 大きな 改札
大きな踏切の向こうは工場
そして、ここでの撮影を終えたころには、ついに雨が降り出した。いつ降ってもお かしくない天気ではあっただけに、まだここまで持っただけラッキーだと考えたいが、それにしても気分の乗らない撮影だった。こんどはぜひ晴天の下訪れたい が、廃止までにその機会はあるのだろうか?
05.3.27
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