消えゆく鉄道'04 その4

名古屋鉄道 岐阜市内/揖斐/田神/美 濃町線

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これまで徐々にその枝葉を失ってきた、名鉄の600V線であるが、今年度いっぱいをもってそのすべてが廃止されると報じられ た。
その延長は36km程度だが、駅数では優に40を超える一大ネットワークだ。とても1日で回りきれるものではない。
そこで、今年の夏休みに二日間かけて、その全線を探訪することとした。




日付は8月15日を回った。我々は岐阜市内へ到着したが、折りしも雨が降り出す天気となっていた。
車中で朝を迎えたが、一向に天候の回復する様子はない。そぼ降る雨の中、とりあえず岐阜市街地から揖斐線に沿って走り出した。


黒野駅についたころには、雨こそ上がっていたが、相変わらずの曇天だ。これでは全く写欲が湧かない。
まだ朝も早く、天候の回復を待ってみることにし、その間に廃止となった揖斐線や谷汲線の線路跡をまわってみたりした。

 揖斐線の跡   谷汲駅の保存電車





黒野駅に戻ってきた。しかし結局雲は厚いままだ。かといって、岐阜くんだりまでくて何もしないわけにもいかない。
とりあえずデジカメを持って、駅の様子をスナップしていた。

 黒野を出発 路線図は昔のまま



・・・しかし、不思議なもので、レンズを向けていると、だんだん気分が乗ってきた。いったん車に戻り、本務機を取り出して、フィルムを装てん。いよいよ本 格的に撮影スタートだ。

 黒野駅構内 


黒野駅には、510形が留置されている。あまり出番がない車両とはいえ、その塗装はピカピカで、とても大事にされている様子が伝わってきた。

 モ510





我々は尻毛駅に移動した。ここは交換可能な設備を持つ中間駅だ。

 昭和の香り    列車交換  


つづいてその隣である、旦ノ島駅を訪れた。駅には花があふれている。この近隣の住民の手によるもののようだ。三河線のときも感じたが、住民が駅をとても大 事にしていることが感じられ、うれしくなる。



 花であふれる駅  



そして両駅の間にある、尻毛橋にやってきた。ここは古めかしいガーダーが特徴の、撮影名所でもある。

 川を渡る  


近ノ島駅は寺院の脇にある。幟がはためいている。
 お参り  





昼過ぎには、揖斐線の起点となる、忠節駅にたどり着いた。雲が切れ、日が差してきている。ようやく撮影に向いたコンディションになってきた。

 まだ新しい駅   ここから単線  





ここから先は岐阜市内線である。線路も併用軌道となり、道路を行く車の交通量も格段と増える。市街地まで行ってしまうと、車での移動もままならないため、 すぐ先の長良川沿いの土手に車を停め、その近辺で撮影することとした。

その長良川を渡るのが、忠節橋だ。重厚な鉄骨が古めかしく、とてもいい感じだ。


 忠節橋  幾何的な風景  


袂には、早田という電停がある。岐阜市内線をはじめとする各線は路面電車なので、当然のことながら電車のりばは道路中央の安全地帯にある。しかし、その区 切りは単なる白線で、ホームも柵も何もなく、非常に怖い思いをする。ホームを作れないのは行政の許可が下りないためだと聞いたが、クルマ優先の社会を選ん だ市政の結末が、この電車たちの命運を決めたとも言える。

 停留所の駅名標   我々には珍しい標識  





ここで一通り撮影を終えたら、今晩の宿を探すこととした。ちょうど徹明町に格安のビジネスホテルがあるらしい。早速チェックインした。いままでどこに行っ ても車中泊だったのに、最近はちょっと弱気な我々である。裏を返せば、そんな我々でも泊まろうという気になるほどの激安料金なわけだ。
ここで夜をすごす。車の心配がないので、いくら飲んでも平気だ。しかし飲みに行く前に、Y君にそそのかされて北斗の拳にやられてしまうという失態を犯して しまった。なので酒がうまくない。





さて、翌日となった。このホテルは、目の前が徹明町の電停というロケーションだ。徹明町といえば、その交差点の3方向、かつては4方向すべてに向かって路 面電車が走っていたという、中核をなすジャンクションだ。その複雑な構成を見せる線路は、美しささえ感じる。

 徹明町電停   幾重にも重なる線路  

チェックアウトが10時なので、それまではホテルの駐車場に車を停めておける。これを利用し、我々は徒歩で岐阜市内線の撮影に向かった。

岐阜駅前から徹明町をとおり、千手堂まで歩く。我々の普段の生活では目にすることの少ない信号や標識が、非常に珍しく目に映る。
 新岐阜駅前を出発 始発で客待ち  



 徹明町を行く  利用客は意外と多い


 黄色い矢印が目を引く  



程なく10時をすぎた。ここからは車で東進して行く。美濃町線の撮影だ。
途中、競輪場前駅からは、田神線が分岐している。ちょうど元札幌市電の連接車がやってきた。

 堂々とカーブ  



その先は、名鉄の各務原線に合流する。ここには電車基地があり、赤い小さい電車たちが肩を並べていた。

 電車基地 




さて、美濃町線に戻り、東進を続けることにしよう。
野一色の手前で、併用軌道は終わり、鉄道専用線となる。この専用線のことを、「新設軌道」と呼ぶことを、ここに立っていた境界標で初めて知った。
そんなことに感心しているうちに、電車がやってきた。その電車のむこうに、もう1両電車が後を追ってきている。

続行運転だ。

 続行運転  


 ここから新設軌道   へたうま?




野一色駅は、道路とホームが一体になっている、不思議な駅だ。こんな変わった駅が多いのも、600V線区の楽しみの一つである。


 Door to Doorも可能  



そのすぐ近くには、白山神社がある。神社の敷地を横切っているので、参道に踏切がある。谷汲線でもこんなシーンがあったのを思い出す。

 参道を横切る 







その先、美濃町線はしばらく国道156号線と併走する。交通量も多く、思い立ったところで車を停めにくいので、しばらくは我々も一緒に併走することとな る。
そして国道から分かれる線路を追って市道に入り、ふたたび線路に出会ったところ、そこは上芥見駅であった。




正直、おどろいた。



上芥見駅   駅舎は道路の反対側


21世紀にまだこんな場所があったとは・・・などというと失礼かもしれないが、細い市道の脇に埋められた2本の線路、まるで歩道のような低いホーム、軌道 を覆う波打ったアスファルト・・・その線路は青い空の下、蛇のようにうねりながら伸びている。

 青空の下  

鉄道風景でここまで感動したのは、ほんとに久しぶりだ。ここにずっといてもいいという気にさえさせる、一番のお気に入りの場所となった。


 線路はこんなだ  


しかし、やはり全線回ることがひとつの目的でもある。ひととおり撮影を終えたら、移動を再開する。




白金駅に立ち寄った。ホームには白い礫が敷き詰められている。駅の名前どおりのイメージだ。
到着した電車から駅員が降りて、ポイントに油をくれていた。
 白金駅へ進入   陽炎の中で



再び合流した国道は、途中から248号線に変わる。国道と側道の間に設けられたスペースを、電車は堂々と進む。

 道路も複雑だ    花道を行く 





そしてかつての中継駅、新関駅に到着した。99年にここから先の廃止時に訪れて以来となるが、様子はまったく変わっていないようだ。


 新関駅   閑散とした構内


 市内へお出かけ  





ここから先、わずか300メートルで、終点関駅に到着する。駅自体はもともと長良川鉄道のもで、名鉄はその隅にバス停のような停留所を設けている。かつて は軌道が道路中央へ躍り出ていた場所は、大きな踏切が作られていた。

 せせらぎを渡って終点へ  


 終点    威圧感ある踏切  






さて、ここで一通り全線を回ったことになる。が、まだ日は高い。ならば、今一度、あの上芥見へ行ってみよう。あれほどの景色には二度と会える気がしない。

 言葉が出ない   隣は天井川  





 途中寄り道した赤土坂駅 





日差しもだいぶ黄色くなってきた。夕暮れも間近だ。撮影の最後は、津保川を渡る鉄橋とした。近所の少年も、携帯のカメラで最後の夏を切り取っていた。

 鮎釣りもシーズン   薄闇迫る




 もう秋の気配








こうして、二日間にわたる取材は終了した。電車も新しく、まさかこんなに早く廃止が訪れるとは思わなかっただけに、残念である。外資系の会社が、これら廃 止予定線を買い取るという動きもあったようだが、夢と潰え、結局廃止が現実のものとなってしまった。旅情だけで廃止反対を叫ぶべきではないが、この線区 は、もっと行政の協力があれば、すばらしい低公害のインフラとして存続したかもしれないと思うと、全国に残る路面電車のほとんどが見直される中にあるだけ に、残念な思いが重なる。
とか言っても、結局車で撮り鉄している我々には、そんなことを言う権利はまったく無かったりするのだが。




05.3.24

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