消えゆく鉄道'05 その1

のと鉄道 能登線

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なんだかんだでのと鉄道を訪れるのも3回目となった。
今回は、いよいよのと鉄道オリジナルの区間である、穴水から先の全廃である。
正直、既に2回訪れているので、まあ今回は行けなくても良いかとも思ったが、どうやらY君は行くつもりでスタッドレスタイヤまで準備したようである。これ は行かなければ悪いだろう。
ということで、年明け元旦の昼に出発、長野を斜めに横切って安房峠から一気に富山方面を目指すルートを採った。



渋滞らしい渋滞もなく、22時半には既に穴水に到着していた。予想より30分ほど早い到着だ。
もう下り方面の列車はないのだが、とりあえず駅の様子を撮影。
改札には、急行や輪島方面の案内板が残されていた。

温度計は0℃    もう用無しの札たち

さて、夜も遅く、今日はもう行動できることが何もないので、食事をして寝ることにしよう。
しかし、今日は元旦。しかもこの時間。食事といっても、開いている店が皆無だ。
仕方ないので、まだ少しでも可能性のある、珠洲まで移動してみることにした。
まだ「市」の方が何かあるだろうという考えだ。

その考えは無惨にも崩れ去った。結局コンビニでカップラーメンという、わびしい夜となった。



翌朝、まだ真っ暗な6時半に起床。車を珠洲駅前に回し、撮影開始だ。
始発の準備で、構内では駅員が除雪している。
車庫から一両、気動車が出てきてホームに止まった。程なく、始発の上り列車として、その気動車は去っていった。

 始発列車  今日初めての踏み跡




徐々に空も白んできた。珠洲駅の工場には、職を失って久しい急行型車両が顔をのぞかせていた。

 明るんだ珠洲駅  NT800型




我々はそのまま蛸島に移動した。

 蛸島駅

折り返しを待つ1両の気動車。カメラを構えると、運転士が声をかけてきた。
じゃまだとか注意されるのかと思いきや、
「これ、パンフレット。駅にもおいてあるけどね」
思いがけない親切に、ちょっと感動したりした。

 列車にあいさつ?

蛸島駅前には、怪しい自販機がある。たばこ用自販機だが、黒塗りで、商品はちらほらとしか入っていない。
何かと思ったら、どうもおみやげ物を売っているようだ。筆者も、記念の木の板を買ってみた。ただのかまぼこ板みたいだが、記念にはなるだろう。




ここから順に穴水方面に移動しながら、列車と会合しつつ撮影していく。
まずはすぐ隣の飯田駅。駅舎からホームには、長い階段を通っていくのが印象的な駅だ。近くの高台に登って撮影。

 木守の柿


次は上戸駅の近くにある鉄橋で撮影。
 朝日を行く



昼前には、のと鉄道で一番有名と思われる駅、恋路駅にやってきた。

 恋路駅

真夏のシーズンに来たときと比べれば、さすがに閑散としているが、それでもちらほらと観光客の姿が見える。駅名だけでなく、この付近の恋路海岸の造形も、 これまた美しいものだ。

まずは、山から俯瞰で撮ろうと考え、線路をわたるが、地形的に良くない。
仕方なくトンネルポータルの上に登り、下り列車を撮影。

 恋の旅路

その後、海岸を挟んで反対側から、海を入れて撮影。
海には海藻がたなびいている。

 凛とした冬の海




このあたりから、列車は1〜2時間に一本となる。
今回は、列車がいなくとも、駅自体を被写体とするよう心がけた。
雪国だからか、質実剛健なコンクリート駅舎が目立つ。
その無機質な感じも、哀愁があって良いものだ。

 松波駅    国鉄時代の遺産も

雪国だからか、質実剛健なコンクリート駅舎が目立つ。
その無機質な感じも、哀愁があって良いものだ。

 中核、宇出津駅





さて、やはりのと鉄道といえば、海をバックに走る姿を撮りたいものだ。
そんなイメージでロケハンしながら走り、見つけたポイントは、矢波駅を遠くに望む、なかなかの場所だった。


 陽だまりの海岸



そのまま矢波駅に立ち寄る。雨上がりで濡れた線路に、逆光がまぶしい。
 潮風の駅   雨上がり

そう、今日はいやな天気なのだ。薄曇りから晴れてきて、これはラッキーと思ったら、この後天気は下り坂となっていく。しかも気温が高いので、雪ではなく雨 なのだ。撮影には厳しい条件となった。




車は一路249号線を南下していく。その途中・・・
「!?」
なぜこの時間に列車が見える!?
場所は鵜川駅だ。ダイヤ上この時間に列車は無い。一瞬焦ったが、すぐに留置車両だと分かった。
とりあえず近づいてみると・・・なんか様子がおかしい。
よく見ると、窓枠が曲がっていたり、そもそも窓ガラスがなかったり、排障器が曲がっていたり・・・

 ぬけがら

どうやら廃車となった車両たちを留置してあるようだ。彼らは部品取りに供されているらしく、ハゲタカ状態となっている。
車内は荒れている。といっても部品取りされているだけだが。しかし窓もなく吹きっさらしの運転台など、見るも痛々しい。廃線までここでこうやって過ごすの だろうか。なんか哀れに思えてきた。

 車内も荒れ放題




鵜川を出る頃から、本格的に天気がやばくなってきた。とりあえず様子を見ながら到着したのは甲駅。
ここにはオユ10が展示されていたそうだが、廃線を前に移動してしまったそうだ。しかし駅は浦の小駅といった趣の、いい感じの駅だ。
隣には池がある。カモメが休憩していた。

 甲駅 小沼のほとり



雨も本格的になってきた。撮影も厳しいものがあるが、日が暮れるまではがんばらねばならない。
とりあえず何も食べてないので、何か食ってからにしようと思ったが、近隣にはコンビニすらないようだ。
いったん穴水に行くか、それとも戻って宇出津に行くか・・・選択に悩んだが、今後の行程を考え、宇出津方面に戻ることにした。
途中温泉で遅い昼飯を取っている頃には、雨も激しくなっていて、撮影はあきらめムードだった。それでもとにかく撮影地に向かうことにする。さっきも来た矢 波駅だ。
駅の近くに漁港がある。そこから海を挟んで駅を望むことができる。手前には漁船が並べられている。ロケーション的には最高なのだが、如何せん雨が・・・

と思っていると、雨が小降りになった。ちょうど列車のくる時間も近づいた。車から降り、防波堤の上に立つ。

すると、なんと目の前に大きな虹が。背後からは光が差してきた。

まさに奇跡としか言いようがない。とっさに太陽を見る。周りの雲の様子を見ると、5分程度で再び雲に隠れてしまいそうだ。早く列車来い、そう一心に祈っ た。

遠くに列車が見えた。虹の向こうを走っている。なんという感動的な光景だろうか。夢中でシャッターを切った。




 虹と漁船と列車



列車は駅に止まり、再び走っていった。乗客たちも虹を見つけて感動しているのが見えた。


列車が行ってしまったら、再び雨の世界だ。太陽光で撮影できるのは次が最後になる。我々は、夏にも撮影した、中居駅に向かった。
中居駅の手前に、ボラ待ち櫓が建っている。本当はこれと絡めて撮りたいが、残念ながらそのようなロケーションは見つけられなかった。代わりに、小学校から 俯瞰で漁港をすり抜ける列車を撮影することにした。
相変わらず雨は降り続いている。今回ばかりは、雨もあがらないようだ。覚悟を決めて車外へ出、カメラを構える。すると・・・
なんとまた陽が差してきた。逆光で町が、海が、レールが光っている。なんとも幻想的な光景だ。雨が金粉のように舞い散っている中を、列車が通過していっ た。


 きらめく夕日




ここでいよいよ日が暮れた。最後に中居駅でバルブ撮影をしてみよう。今回からレリーズを購入したので、バルブ撮影も楽しいものだ。雨の中、標準レンズに付 け替えて列車を待つ。


 別れの夜



暗闇の中、列車は小休止の後、静かに去っていった。





これをもって、のと鉄道の撮影は終了。一路帰路に就く。
しかし、これほど美しい車窓を持ちながら消えていくのは、本当に惜しい。観光だけでは生き残れない時代なのだろうが、それでも、こういう路線が消えていく のを見ると、一緒に鉄道の旅情も消えていくのを痛感する。消えていくからこその旅情というものもあるとは思うが、そういう旅も限られていく世の中なのだろ うか。

05.3.22

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