消えゆく鉄道'05 その4

伊豆箱根鉄道 駒ケ岳鋼索線(駒 ケ岳ケーブルカー)

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日本を代表する観光地のひとつである、箱根。
レジャーの多様化により、かつての栄華は失われつつある。
その箱根の屋根である駒ケ岳も、その斜陽化の波に飲まれたひとつである。
かつては山頂にスケートリンクを備えたリゾートであり、
箱根神社の奥座敷ともなる神聖な地、駒ケ岳。
そこに通じる道は無くとも、ロープウェーにケーブルカーと、公共交通機関を二つも擁してきた。
たかだかあの規模の山にだ。それだけでもかつての賑わいが目 に浮かぶと言えよう。

筆者は箱根のふもとに住む。
どちらかと言うと、今回のネタはご近所へGO!の趣だが、
残念ながら駒ケ岳ケーブルカーはこの8月で廃止となるので、
こちらの コンテンツの仲間入りとなった。
幼少のころ、ここに行った事があるはずなのだが、記憶に無い。
はたして今、雲の上にそびえる山頂には何があるのか。


5月14日、京浜地区からやってくるS氏、T氏そしてA氏と、箱根で落ち合うことになった。
前回の熱海ロープウェー探検の面子である。
集合時間は11時。 遅れてはなるまいと、慣らしを終えたばかりの新車で1号を飛ばす。
危なくネズミ捕りにかかりそうになりながらもなんとか予定前には到着。
しかし、彼らは渋滞には待ってしまったようだ。
この時点でまだ国府津となると、あと1時間はかかるだろう。


集合場所となった駐車場で、車の中でのんびりすごすことにした。
もともとボーっとするのは嫌いではない。
周りを見渡す。駐車場には10台程度の乗用車。
一部舗装されているものの、ひびわれが激しく、かなり痛んでいる。
車はあるが人気は無く静かだ。ここは廃墟なのかとさえ疑ってしまうほどである。


ここが、駒ヶ岳の裏玄関、駒ケ岳鋼索線の始発駅の現状である。


ここ駒ケ岳登り口駅にやってくるには、国道1号線から大きく山に分け入っていかなければならない。
もうひとつの玄関口であるロープウェーの湖尻駅に比べれ ば、アクセスの悪さは比べるまでも無い。
さすがにこれでは、廃止やむなしか、と淋しく思う。


ようやく3氏が到着した。オフ会の始まりである。
3氏とも、この現状に驚き、そしていまだ色濃く残る昭和テイストに狂喜していた。
特にS氏はS43年製コ ルト1100を所有するオールドタイマーだ。
駅舎と並べて写真を撮ると、ほんとに21世紀かと疑いたくなる。

 これ2005年です 






ケーブルカーは2〜30分待てば1本走るので、まずは駅周辺を探索した。
意外にも興味深いものが数多く落ちている。

  踏切?  作業車?


 レールと鋼索


 スカイラインが・・・  なぜ?



我々は切符を購入し、乗車の準備を整えた。
JAF会員は割引料金になるので、会員であるS氏がまとめ買いをした。
手に入れた切符は・・・ロープウェー?

 ロープウェイ?  

実は割引用の切符は、ロープウェー用の切符を流用して、駅名だけ変えているようだ。
正規運賃で購入すると、硬券が出てくるのだから、これは誤算だった。
筆 者はどのみち廃止までに近々再訪するつもりなのでかまわないのだが、3氏はやや残念そうだ。
逆に筆者は珍しいものが手に入ったとむしろ喜びの向き。


ホームに入り、車両に乗り込む。湯の花号という名前がついている。

  出発を待つ    湯の花号


古めかしい発車ブザーとともに、車両は走り出した。
伊豆箱根鉄道は、ここから近い十国峠にも鋼索線を持っている。
あちらは観光スポットとしていつもにぎわっているが、車両は塗色変更のまま、
むかしながらの スタイルで走っている。

しかし、こちらの車両は、一部改良を受けていて、路線バスのようなドアになっていたり、
大きなヘッドライトが取りつられている。
このヘッドライトは、霧が 多い土地柄、安全確保のためとのことだが、
つまり車窓も霧によってさえぎられる機会が多く、そんな眺望の不利なところも、
十国のように賑わい続けることが できなかった一因かもしれない。

 閑散とした車内  運転台



中間の交換施設にさしかかった。
対向する車両は、駒ケ岳号。数名の乗客を乗せて降りてきた。

 こんにちは


中間点を過ぎると、左手に大きな壁が見え、レールはその裏へ回り込んでいく。
カーブしているのだ。
ロープウェイと違い、ケーブルカーは曲線を走ることも可能であるが、
あまりそれを見かけることはない。
なので、とても珍しい光景に見える。


 カーブを往く  



その壁から、山頂駅が姿を現した。
湯の花号は、ごく短い旅を終えて、駅に滑り込んだ。
海抜1327m。
そのホームからは、急な斜面の下にゴルフ場が広がっているのが見え、
足元をすくわれてしまいそうな、そんな錯覚にもとらわれる。

 山頂に到着  運転室

 眼下に広が る

山頂駅は、これまた味わいの深い円形の建物であった。

 駒ケ岳山頂駅


二階はかつて展望レストランかなにかだったようだが、今は入れない。
一階の待合室を眺めて回る。

 よい感じの出札  ベンチ


   こういうの懐かしい


電車の座席を使ったベンチが並んでいたり、興味は尽きないのだが、
その奥にこれまた面白いものが並べてあった。




 これは


パンタグラフだ。


もちろん、今乗ってきた車両にもパンタグラフはついていた。
ということは、ここにあるのは予備品ということだ。
よく見ると、シューの部分が擦り板になっている。
さっき乗ってきたヤツは、ローラーになっていた。
きっとこの予備品は、冬季用なのだろう。もう次の冬はないことを思うと、
なんとなくしんみりする。

 現在のパンタ  




山頂はあいにくの深い霧、というか雲に包まれていた。
風も強く、ほかのお客もまばらだ。
それでも、ロープウェイの駅に行けば、それなりの観光客でにぎわっている。
だが彼らは、ほとんどがロープウェイで下山していく。

 ロープウェイの駅




やはりケーブルカーの使命は、終わっているのだなと感じた。




あいにくの天候で、何も景色は見えなかったが、もともと景色など見るつもりのない我々4人は、
山頂のにぎわったころに思いを馳せ、駒ケ岳をあとにした。


 さよなら、ケーブルカー



06.3.24

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