消えゆく鉄道'06 その2

西日本鉄道 宮地岳線・熊本電鉄  前編

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後編へつづく >>

今年度に廃線を決めている鉄道各社の中で、一つだけ極端に遠い場所にあるものがある。

西鉄宮地岳線だ。

筆者に於いても年々置かれる環境が変わっており、今後遠方への取材はますます困難となりつつあるが、逆に言えば今年を逃すとさらに厳しくなることは容易に 想像できる。
折しもお盆時期であり、帰省ラッシュによる道路網の相当な混雑が予想される。かといってこの時期に公共交通手段を使っての取材は、金銭的にも厳しいし、ま ず予約が取れない。
そのような事情から、自家用車による九州取材を試みた。こういった形態の取材はこれで最後となるかもしれないと感慨を抱きつつ。

九州など、そう簡単には行くことのできない場所だ。せっかく行くのならば、西鉄だけ回って帰ってくるのももったいない。
訪れたい場所はいくつもあるが、その中で具体的に廃止案もでており、その可能性が最も高いと思われる、熊本電鉄を訪れることにした。ついでに、九州内を走 るブルトレも撮影することにする。


8月11日、8時頃にY君が筆者自宅に到着。まずは下道を延々と走る。さすがに1週間の勤務後の出発は、特に睡魔がきつい。豊明あたりではすでに眠気が ピークに達していた。
23号〜1号と進み、鈴鹿峠を越えたら、栗東から高速道路に乗る。帰省ラッシュで、こんな深夜でも京都東から渋滞しているようだ。その最後尾である瀬田東 JCTから、京滋バイパスに逸れ、確か小椋ICで降りたと思う。ここからまず京都山崎を目指す。
せっかくの西行き、どうせなら通り道の各所でお目に掛かれる列車を押さえておきたい。ちょうどこの時期はムーンライト九州や山陽が運転されているし、他に も廃止がささやかれる定期夜行を撮影した。
3時頃到着し、6時前に目覚める。ちょうどEF66の引く3170レらしき列車が通過してしまった。
この時間帯は本当に様々な夜行列車が走る、一番にぎやかなときであり、撮影していても非常に楽しい。
しかし長居をするわけにも行かず、なは・あかつきを撮影したらすぐに撤収し、西行きを続けることにした。

 日本海2号      ムーンライト九州


すでに各地で渋滞が始まっている。171号も流れが非常に悪い。VICSの情報を信じ、裏道を進む。高速道路は吹田を中心にして大混雑しているようだが、 その吹田から下り方向の名神高速は、意外と空いているようだ。我々は吹田ICから乗ることにした。
吹田SAで朝食を摂る。うなぎ弁当がなんと350円からと破格の安さだ。400円の大盛りを食べてみた。たしかにウナギは小さいが、値段の割には十分だろ う。

 400円のうな丼


西宮で高速3号に合流するが、ここからは大渋滞の模様だ。なのでここで高速を降り、43号線を進むが、こちらもあっという間に渋滞。VICSでは若干流れ の見える2号線に移ると、こちらも大渋滞。無情にも今頃赤い矢印が表示されている。とにかく少しでも進もうと、裏道に入ってみるが、これも渋滞している始 末。さすがに全ての道が海沿いに集約する神戸は、どうしても渋滞を避けられないのだろう。
なんとか芦屋付近まで進んではみたものの、これ以上渋滞にはまっていては時間が全く見えない。既に11時を過ぎており、今日中に本当に九州へ着けるのかす ら疑問だ。
そこで我々は仕方なく、中国道方面へ抜けることとし、芦有道路で六甲山を越えて、西宮北ICから高速に乗った。ETC割引は適用外の時間だが、仕方ないだ ろう。
院庄ICで降り、ここからはしばらく中国道に沿って下道を走ることにする。山道を使ってできるだけ距離をショートカットしようとしたが、かなりの峠道だっ たりして思うようにスピードが上がらない。


新見付近を通過する際、ちょうど伯備線と併走する。ここで時刻表を確認すると、数十分待てば「やくも」が通るようだ。とりあえず伯備線に沿って川面峠を登 る。ものすごい隘路だ。なのに教習車とすれ違ったりする。
結局思うようなロケーションが無く、伯備線と芸備線の分岐点である備中神代駅に着いた。その先に、いい具合のカーブを発見。撮影体制に入った。本当はカー ブで車体を傾けて通過する姿を想像していたが、駅近くでスピードは遅かった。

 381系「やくも」


そのまま芸備線に沿って182号を進む。途中芸備線の気動車を撮ろうとしたのだが、残念ながらポイントに着く前に通過していってしまった。仕方なくそのま ま進んでいたが、途中国道からものすごい良い雰囲気の駅を見かけた。どうにも見過ごすことができず、つい立ち寄ってしまった。
その野馳駅は、木造の小さな駅だが、委託できっぷを売る人がいた。すこし傾いた黄色い日差しに照らされて、とても美しい情景を作っていた。

 日本の駅


その後はスーパーで買い物したりしながら走る。途中遅い車に引っかかったりもするが、国道は全般的に信号もほとんど無く快適な道だ。しかし相変わらず ショートカットの山道は厳しい。
そしてようやく広島県内に入った。54号線で可部経由で進もうとしていたのだが、可部市街地に久々にみる赤い矢印が。渋滞にみすみす入るのも癪なので、土 師ダムの湖畔を走って加計に直接抜けようと、進路変更した。そして国道433号線に入り、順調に進んでいたのだが・・・前を走っていたアルテッツァが急減 速、路肩に停止。何事かと思ったら、通り過ぎる電光掲示板ににかすかに見えた不吉な文字。いや、見間違いだろう、何せ国道なんだし。と信じて広い2車線道 路を進むこと数キロ。突如現れた柵と、その先に見える以上に細い道。結局見た文字は幻でも何でもなく、間違いなく「通行止め」だったのだ。

しかたなく引き返し、案内の標識に従って県道を走った。この道は戸河内付近に出るので、結果として可部線の線路跡を探訪することができた。3年前に停泊地 とした水内駅、近所の人との会話があった20000km記念碑、鉄橋や吊り橋跡など、とても懐かしかった。3年という時間が過ぎてはいたが、一部レールも 残っ ており、廃線跡としては今が一番楽しめる時期ではないだろうか。

 レールの切られた水内駅    20000km碑は健在

加計駅は、ホームの切れ端が記念碑的に残っていて、それ以外は更地だったが、車庫にはキハ47が保存されていた。そこからさらに車を進め、筒賀に着いたの は19時を回った頃だった。

 保存されたキハ47 

今回ここをわざわざ経由したのは、ここに温泉があるからだ。可部線探訪時にも訪れたグリーンスパつつがで入浴する。受付は19時までだったが、施設の好意 で入れてもらうことができた。可部線の廃線跡を眺めながら入る風呂は、格別なものがあった。

   廃線跡を眺めながら入浴

しかしここでのんびりしているわけには行かない。20時までに高速に入らないと、ETC割引が得られないからだ。30分ほどの入浴でさっぱりしたあとは、 戸河内ICから再び中国道に復活する。
ここから100km、半額の恩恵を得て降りたのは徳地IC。防府市に下り、ここからは山陽路を進む。
小郡を過ぎ、小腹も減っていた頃に、目に入ってきた懐かしい看板。Y君も何も言わず即時停止した。
そこにある峠ラーメンは、13年前に九州を訪れたときにも立ち寄ったものだった。もうあれから13年、まだ営業しているとは・・・。早速入ってラーメンを 注文。値段は当時の倍。といっても400円だ。汚い店舗だが、懐かしさを感じる。出てきたラーメンも、はっきり言ってまずい。スープが酸っぱいのだ。しか し、それでもおそらく年金暮らしで好きでやっているであろう老夫婦が作ったラーメンには、何とも言えない味がある。ついスープまで全て飲んでしまった。お 茶もなんだか泥臭いのだが、おばあさんに「お茶のお代わりはどうですか?健康茶なのでいっぱい飲んでね」といわれれば、もう涙が出そうになってしまう。お そらくはこの味ではお客はほとんどいないだろうが、それでもいつまでも元気で、と願わずにはいられなかった。

 不味くても愛はある

さてそんなノスタルジーも程々に、ようやく我々は関門海峡に到達した。すでに日付は変わろうとしている。すこし3号線を走ったら、もう睡眠状態が限界なの で、すこしでも距離を稼ぐため九州道に乗る。たしか富野ICから乗ったのではなかっただろうか、距離としては20キロほどだが、若宮ICで降り、近くの高 架下で仮眠を取ることにした。


福岡の朝は、意外と快適だった。今回は防虫キットが効果を発揮し、ドア全開でも全く蚊に悩まされずに済んだ。時刻は8時頃であろうか。本当はなは・あかつ きを撮影しようかとも思っていたのだが、夕べのうちに線路近くまで行く体力もなく、今回はあきらめた。
さて今日の探訪先は、今夏の旅行の主題である、西鉄宮地岳線だ。
まずは末端部から順に巡っていくことにし、津屋崎駅へと赴いた。
終着駅であり、駅前にタクシーが常時客待ちをしてはいるが、ひっそりとしていた。海岸に近いが、乗降客は数人だ。海水浴場も空いているのだろうか。

 津屋崎駅前   構内を望む


 駅へ進入



一つ香椎寄りに移動する。路線名にもなった、宮地岳駅だ。ここも人気が無く、おそらく参拝客用であろう大きな団体改札も、がらんとしていた。

 宮地岳駅   広い臨時改札


ちょうど路肩が広くなっている場所があるのでそこに車を停め、その周辺で通過する列車を撮る。既に太陽は容赦なく照りつけ、気温も上がっている。歩くだけ で汗が噴き出してくる。

 313形が登場   小川を越えて


途中、田んぼが広がる中をカーブしていく場所があった。遠くには先客の同業者も見える。一本となりを通る農道から撮影。この農道が、かつて移転前の宮地岳 駅に向かう線路だったと言うことは、帰宅してから知るのだった。

 盛夏を行く    旧線跡に立って


さて時刻は11時。宮地岳線は結構本数が多いので、ここで一旦離れて鹿児島本線へ向かう。
「はやぶさ」を撮るためだ。市街地のS字かストレートで撮影しようと思っていたのだが、思うような場所がなかなか無く、うろうろと彷徨っていると、東福間 と東郷の間で、カーブした築堤を発見。他に場所もないことから、ここで撮影することに決めた。
この日の「はやぶさ」号は、東海地方の大雨の影響で、2時間程度遅れているらしい。これは随時掲示板にて情報を得ることができていたので、本来の通過時刻 +1時間半ほどを見越して現地入りした。しかし実際には遅れは3時間ほどに拡大しており、実際に「はやぶさ」が通過したのは、正午すぎであった。この間 ずっと強烈な日差しの元にいたため、かなり日焼けしてしまった。他にも数名の鉄ちゃんがいたが、一様にほっとした様子だった。

 待ちに待った「はやぶさ」

思いがけず時間を取ってしまったが、昼飯を買ってから再び宮地岳線に戻る。お買い物はもちろん西鉄ストアだ。


西鉄福間駅は住宅街に埋もれるようにひっそりと、しかし適度なスペースを取って存在していた。
海水浴客が数名降りていったり、夏休みの中学生が街へ遊びに行くのにやってきたり、少ないながらも人の動きが見えた駅だった。

 西鉄福間駅


 地元民の足     上下離合する


その南側にある西郷側を渡る鉄橋で撮影。海が近い雰囲気が、川面の穏やかさからも読みとれる。

 穏やかな水面    松林を抜けて

このあたりは、松林を隔てて海沿いを走る。その松並木を行く様子を撮影した。
また、畑の色も白く、海がすぐ近いことを教えてくれる。

 畑も真っ白    さわやかな夏風渡る


花見駅には、その名を意識してか、小さな花がたくさん植えられていた。

 花見駅     花に囲まれて



西鉄古賀駅は、交換可能な駅だ。この辺からだんだん人の乗り降りもはっきりと見られるようになってくる。

 西鉄古賀駅    夏休みでも通学


花鶴川をコンクリート橋で渡っていく。向こうには玄界灘が見えている。

 玄界灘の水平線が見える   Sカーブを過ぎる


次は古賀ゴルフ場前駅だ。たしかにゴルフ場の正門前にあるが、今の時代電車でゴルフに行く人がどれだけいるのだろうか?もっともプレイ後にビールを飲んだ ら電車で帰ることができるのは、意外と楽かもしれないが。

 ゴルフ客は乗らない


ここを過ぎると、新宮神社を囲む松林に沿って走る。白砂青松といった雰囲気で、日本の夏らしさがにじみ出ている。美しい光景だ。

 青と緑が目に映える

そしてその神社の入口となる、西鉄新宮駅に着いた。ここから先は存続が決まっている区間で、一気に乗客が多くなる。
付近はまたいい感じの閑静な住宅街で、帰省に来たであろう男性の車を見送る老婆の姿なども見られた。

 西鉄新宮駅    明暗分岐点

 アンビシャス広場とは何ぞや


ここからは通りがけに列車がいたら撮る、と言う感じで進むことにする。市街地も混雑しているため、車を停めるのが困難だからだ。
和白駅付近で、香椎線をオーバークロスする。ちょうど香椎線のキハ40も撮影できた。

 香椎線をオーバークロス   急勾配を登る

 香椎線のキハ40


西鉄香椎駅は、立派な高架駅に生まれ変わっていた。映画「点と線」の面影は全く無くなっていた。もっともこのロケは千葉の佐倉駅で行われたらしいが。

 末端が廃線になる雰囲気ではない


ここで夕刻、17時頃となった。そろそろ上り「はやぶさ」が通過する時間だ。我々は名島橋の袂で、列車を待ってみた。
しかし待てども待てども列車は来ない。小一時間ほど待って、その間415系などを撮影できたが、結局「はやぶさ」は現れなかった。その時は情報が得られな かったが、あとで調べると、やはり下りが遅れた影響で上りも2時間近く遅れて運行したらしい。

 新旧415のランデブー



日も暮れて、最後に貝塚駅を眺めたら、またETC割引を狙って高速に乗る。いきなり近場から乗ってしまうとそこはまだ都市高速なので料金が違うため、太宰 府までは下道を行く。
そこから目的地最寄りの植木ICまでは、ちょうど100km以内に収まる距離だった。労せず熊本に到着。今晩の風呂を探すことに。さすがに大きな街だけ あって、またナビとインターネットの情報力で、スーパー銭湯をうまく見つけることができた。
その後は宿営地を求めて彷徨う。途中熊本ラーメン専門店があったので、遅い夕食をとる。自前の製麺所を持つ店で、味もなかなかだった。ニンニクが多すぎる 嫌いはあるが。お土産に二玉入りの麺を300円で買っていったが、これも後で食べたらうまかった。こんなことならもっと買ってくれば良かった。

 本場熊本ラーメン


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