消えゆく鉄道'06 その2

西日本鉄道 宮地岳線・熊本電鉄  後編

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翌朝一番は「なは」の撮影をする予定だ。朝一にロケハンで苦労しないように、夜のうちに少し見回っておき、さんざん迷ったあげく野球場で投錨することにし た。

果たして、昨晩のポイントは障害物や光線状態でNGであった。結局あたりを探し回り、カーブを発見。正面で撮ることに成功したが、出来上がった写真はピン ぼけだった。早起きの労も報われなかった。

 那覇も遠くなった「なは」


時間はまだ7時半。まずは菊池線の末端区間で撮影を始めた。やってきたのは5000系。懐かしの青がエルだ。北熊本〜上熊本間はこれが一日中往復している ようだ。午前中は純正のおたふく顔が順光にもなるので、しばし粘る。

 花盛り

沿線唯一のトンネルを抜けてくる列車を待つ。今日も暑くなりそうだ。

 トンネルを抜けてきた    坪井川公園付近


さて、朝の撮影も一段落したところで、こんどは藤崎線の方に行ってみよう。
まず藤崎宮前駅に行ってみることにした。しかし全然道路からはそれらしい駅が見あたらない。よくよく見ると、パチンコ屋の入った大きなビルに、小さく「藤 崎宮前駅」と書いてある。これじゃあ見つかるはずがない。駅の裏手に回ってみると、立派なビルの下に、ひっそりとホームが作りつけられていた。

 電車のりばには見えない   立派な駅ビルだ

今度は黒髪町駅に行ってみた。空き地のような変な空間だ。駅舎はなんとなく臨時駅みたいな作りの小屋がポンと建っているだけだが、それが不思議な雰囲気 だ。
そのあと、併用軌道があることを知らずに、北熊本駅方面へ移動を開始してしまった。もったいない。

 黒髪町駅   住宅の隙間を縫って



北熊本駅は熊本電鉄の中心駅だ。駅舎も大きく、ローカル線の雰囲気がよく出ている。

 空と駅舎の青がマッチ    6000系同士が離合

木製の架線柱は、丸太2本に角材を渡しただけのきわめて簡素なもので、まるで物干し台のようだ。これでよく支えていられるなと感心する。

 こんなよれよれで大丈夫?   のどかな朝の駅

そしてここには、通称被爆電車が残っている。正しくはこの車両が被爆したわけではないのだが、古くて貴重な存在であることには変わりない。

 被爆電車ことモハ71    5000系の台車が・・・



国道3号線を右に離れると、県道はすぐに線路と併走する。ここにある亀井駅は、道路に面した1面1線の小さな駅だ。

 電柱広告    駅の向かいは道路


そしてとなりの駅に移動。かなりの難読駅、「八景水谷」駅だ。ちょうど自衛隊の駐屯地入口に設けられている。この駅のとなりに丁字路があり、ここを踏切で 渡っているのだが、これがまた面白い。この踏切はかなりの大きさであるが、遮断機がないのだ。そして丁字路の突き当たり、つまり道路の脇に、警報器が立っ ている。普通ならあり得ない場所に立っているものは、とても奇妙に見える。

 大きな踏切    こんなところに・・・?


ここで我々は一度鹿児島本線に戻る。熊本へ向けラストスパートをする「はやぶさ」を撮影するためだ。この時間なら、昨晩のポイントも光線状態良好となって いる。西里駅を遠くに望む踏切だ。「はやぶさ」はほぼ定刻に通過。列車見物の親子も、通過を車の中から見守っていた。

 今日は無事通過

さて我々は熊本電鉄に戻り、線路に沿ってさらに北上することにした。
我々は堀川駅にやってきた。交換可能な駅で、駅前はちょっとした商店街の雰囲気だ。交通量も多く、活気を感じる。
しかし我々は駅の裏手からアプローチしてしまい、非常に狭い思いをしてこのあたりを抜けた。駅正面に回ったらすでに列車は発車してしまった。名前の通り、 住宅街に掘られたように存在する駅で、歩道橋から眺めるととてもよい雰囲気だ。

 堀川駅   掘割のような感じ



駅前に車を停めて今後の道筋を考えていたら、タクシーにどけと言われたので出発。
続いて訪れた新須屋駅は、浄水場の近くで閑散としたところだが、乗客が二人もあった。

 新須屋駅


となりの須屋駅は、市役所の出張所が隣接している関係もあり、かなりの乗降が見られた。花壇に植えられた花も美しい。

 須屋駅前の花壇   木製架線柱が並ぶ


ここからすこし山あいを走るのだが、いままでずっと木製だった架線柱が急にコンクリートになり、道路脇に細長い用地が現れ始めた。どうやら線路の付け替え があったようだ。その途中にある三ツ石駅は、これに伴って2001年に新設された駅らしい。

 左が旧線跡   三ツ石駅


そこから九州道をくぐり、黒石駅に到着。この駅も付け替えでリニューアルされている。交換可能だがホームしかない無人駅だ。となりには変電所がおかれてい る。

 黒石駅    黒石変電所


この区間の付け替えの原因になった387号線を通って先に進むと、電波高専前駅に到着する。裏手はその名の通り熊本電波高専の敷地が広がっている。夏休み だが学生が ちらほら出入りしているようだ。

 電波高専前駅    裏手は高専

そこから下り方を望むと、再春荘前駅のホームが見える。駅間距離で400mにも満たないそうだ。もちろん熊本電鉄最短である。

 再春荘前に停車中

その再春荘前駅の裏は、再春荘病院という大きな病院が建っている。ここの近くにある酒屋でジュースを買って休憩。今日は大量に水分を摂っているが、ばてな いだろうか。

 再春荘前駅


さてここからちょっと走れば、終点の御代志駅だ。大きな駅前ロータリーを備え、バスが降車客を迎えに来ている。そして今は片面となってしまったホームに、 電車が到着した。車内からは自転車を持った少年が降りてきた。ここも日中の閑散時間帯は自転車の持ち込みを無料で認めている。便利な制度であり、近隣の鉄 道でこれがOKならば是非利用したいのだが、JRではまず無理だろう。

 御代志駅   折り返しまで休憩中

 自転車登場   清潔な車内


途中堀川駅近くの土手で撮影。夏の天気らしく、夕刻も近づくと共に青空も隠れ始めた。

 土手を登る   栗の実もまだ青い



我々は熊本市街へ向かう。最後は、もう一度5000系の走る区間を撮影して締めようと考えたからだ。
まずは上熊本駅に向かった。JRの駅は工事中のようで、仮駅舎となっていた。その隣に一本突っ込みのホームが。暫く待っていると、平面ガエルが現れた。 5000系の増設された運転台だ。写真を見たときはゲテモノだなぁと思ったが、実物を見ると結構違和感なく作られている。

 上熊本駅   平面ガエルが到着

 自転車は便利    オリジナル顔も無骨なメイク


ここで再度鹿児島本線へ出張。朝の西里駅から少し北上したところにSカーブを見つけたので、ここで列車を待った。上 り「はやぶさ」も、今日はほぼ定刻の通過だった。

 東京へ向けて



三度熊本電鉄へ戻ると、次の韓々坂駅に行ってみる。朝一で通過したのだが、今回は車を停めて立ち寄った。
ちょうど電車がやってきて、高校生が乗り込んでいった。

 乗る準備

次に、池田駅を目指したのだが、おそらくここが全線で最も到達が難しい駅だろう。山あいの狭隘な路地の先に、その駅はあった。ここは電車で来るのがいちば ん便利だろう。
朝撮影したトンネルのちょうど裏手になり、向こうからトンネルをくぐってやってくる列車が見えた。

   やっと着いた池田駅   トンネルを照らす


そして最後に、打越駅を訪れた。
ここも狭い路地の先にあり、朝は見つけられなかったのだが、徒歩で向かうと小さな案内看板があり、住宅地の中にぽっかり空いた空間にホームがぽつんと存在 した。なんとも言えない光景である。

 案内看板   打越駅


これで全部の駅を回ることができた。この後は今夜の目的地である湯布院を睨みながら、廃線跡を眺めて進むことにした。
一気に御代志まで行き、国道の右手に見える線路跡をたどってみた。まずは御代志駅から様子を探りつつ、車で跡を追う。

 御代志から北を望む    大池駅付近の路盤

調査中にY君のPCでホームページから情報を得ようとしたが、残念ながら通信速度が遅くエラーになってしまう。よってわかる範囲での探索となった。途中鉄 橋や細長 い空き地を確認し、泗水駅の跡地では祭りが行われていたりしたのがわかったが、ここから先、一旦線路跡を見失う。そしてそのまま菊池市街に到着してしまっ た。

 辻久保駅跡付近   塩浸川の鉄橋


 合志川鉄橋は遊歩道に  

終点菊池駅跡の情報は全くなく、これはもう見つからないだろうかと思った矢先、写真で見た「きくちプラザ」を発見。車を停め、建物の裏手を探索してみた。 今一確証がもてなかったのだが、すこし歩いてみたら、埋もれた踏切の痕跡を発見。レールもわずかながら残っている。少々感動した。

 菊池プラザ   残ったレール

その後車で周辺をぐるっと回ったが、それ以上の発見はなかった。我々は九州での取材を完了し、はるか1000キロ以上離れた自宅へ向けて帰路に就いたの だった。
九州旅行はこうして幕を閉じたが、久々の長距離行なうえに、せっかくだからと盛りだくさんな内容にしたため、印象深い旅となった。そして訪れたどちらの鉄 道も、のんびりとした情景にあふれていた。すなわち旅客が少ないということは鉄道会社にしてみれば喜ばしいことではないが、廃止の決まった宮地岳線は兎も 角、熊本鉄道はLRT化も検討しているという。どんな形であれ、鉄道として残ってほしいと思う。

07.1.7

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