消えゆく鉄道'99 その4
●小湊鉄道
いまや巨大なベッドタウンとして発展した千葉県。しかし、中南部は、今もって水田と山の連なるのどかな風景が健在だ。
そんな中を走る小湊鉄道は、「首都圏に一番近いローカル線」として、近年人気を集めている。都心に近いこともあって、テレビ、CMなどのロケもときどきおこなわれている。
今回我々は、その魅惑の地、牛久を目指して進路を取った。
ゴールデンウィークも始まり、行楽気分に包まれた5月 日、一足先に上京していた筆者は、都内某所でY君のピックアップを待つ。そして現れた彼の片手には、某ゲームが…
どうやらパチンコの戦利品のようだ。
そんなことはどうでもいいが、21時30分、こうして合流した我々は、東京を横切って千葉の山中へと向かった。
合流してからものの2〜3時間で、五井に到着する。今までの長距離行軍から比較すると、とても負担が軽く感じられる。事実、自宅からの距離も200キロ程度と、日帰りも可能なコースである。
こんな近いところに、そんなローカル感が残っているのか?
適度に期待を逃がしながら、我々は上総入りと相成った。
今回拠点に選んだのは、小湊鉄道のちょうど真ん中辺にある高滝湖。湖畔のさわやかな目覚めを期待して、我々は睡眠に入った。
……目が覚めたのは朝4時。おもてでオヤジどもが大騒ぎしている。何かと思えば釣り人だ。早朝の湖畔に釣り人がいても当然だが、まあ寝てるやつがいるとは思わないだろうから、大声でしゃべるしゃべる。場所を選んだ不運を呪うしかなかった。
結局2度寝して、行動に入ったのは8時頃。いつもといっしょだ。
まずは湖から最も近い、高滝駅に向かう。
山深くもなく、平地でもない、日本の典型的な田舎の風景の中を線路が走っている。
高滝駅停車
正直、ここまで素晴らしいロケーションだとは思わなかった。駅もかなり良い雰囲気を持っている。一気に写欲が上がってきた。
構内にある保線小屋
よい気分で、風薫る季節を満喫しながら駅をへろへろしていると…
「ぱぃーーーーーーーん」
なんだこの音は!?峠小僧のNSRか?とおもいきや、我々の視界に飛び込んできたのは、黄色いメットをかぶった二人組の駆る、モータートロッコだった。
あ然とする我々の目の前を、トロッコはドップラー効果も満点に颯爽と駆け抜けていった…
…気を取り直して列車を待つ。遠くには鯉のぼりもたなびき、五月らしい演出をしてくれている。
たなびく鯉のぼりを背に
今度は国道に乗って養老渓谷の方へ向かって走りながら、途中の里見駅で時刻を調べ、簡易的にダイヤを作成する。そして気に入ったポイントで撮影だ。
サンゴ草の海から 里見駅構内
そして我々は、飯給駅に着いた。
田植え
水田では田植え、その向こうの土手には列車が。感動的なシーンの連続だ。
田んぼ以外にも、あちこちに花が咲き乱れ、初夏を彩っている。
月崎駅は花に囲まれ
再び里見駅。駅の下り方にあるS字も、良い雰囲気である。
美しいSカーブ 里見駅停車
沿線を走りながら、様々なポイントを探す。どこも田植えの終わったばかりの水田で、さわやかさ満点だ。
水面に映る
かと思えば、こんな森深いところもあって、撮影者を飽きさせない。
森の中
小久保駅の付近には、切り通しがある。ここが絶好のお立ち台になっていて、水田の景色を俯瞰できる。
お立ち台から
あたりは田植えと草刈りの真っ最中だ。草刈り機のエンジン音が、盆地にこだましている。
時刻も4時を過ぎ、だんだん日も傾いてきた。今度は上り方面に向かって道を戻る。
そして、さっきも立ち寄った、上総久保駅へ再びやってきた。
列車を待つ学生たち
大きな木をバックに、夕日に染まる駅の美しさは、ここ数年で一番感動的なシーンだった。
小高い丘を背負って
さて、もうかなり夕暮れだ。撮影もあとわずかとなってきた。急いで上総鶴舞駅まで行く。
ここは関東の駅百選にも選ばれている駅で、緩やかなカーブを描く広めの構内が美しい。
上総鶴舞を出発
そして長い5月の太陽も、ついに日没を迎えた。もう空は薄暗くなってきている。最後に立ち寄った上総川間駅で、水田に映り込んで停車する姿をとらえて、撮影はお開きとなった。
ゆらめく水面
すべての日程を終えた我々は、進路を北に取り、飛行機見物のために成田空港へ向かったのだった。
小湊鉄道は、初めて訪れたわけだが、これほどまでに叙情的な鉄道だとは正直思わなかった。
特に水田との組み合わせが印象的なこの線区、こんどはぜひ秋に訪れてみたい。稲穂を背に走るディーゼルカー。これこそ日本の正当派ローカル線だと思うのは、筆者だけではないはずだ。
01.5.31
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